小説コンテンツ一覧

ほそいかわ

     文ちゃんはいつも思案顔です。思案顔なのでぼくは不安になります。文ちゃんは何かをいつも考えている。何を考えているのか、とか、どういうふうに考えているのか、とか、そういうことは全然わかりません。友達の輪の中で話を聞いている時の文ちゃんの笑顔も、ぼくには思案顔に見えます。国語の時間に立って朗読している横顔も他のクラ… [more]

九月三十一日の天気予報 remix

     迷子になった飛行機が東の方角へ流れていく。私達は冷たい部屋の中からそれを見送っている。私達の冷たい床と壁の部屋の外には途切れることのない雑踏がある。飛行機、そっちに行っても何もないよ。陸も国も村も果ても。機体に大きく描かれた「我ら、汝らと我らの望んだ侭に」の引用を見ながら、そういうことなら私達も同罪かもしれな… [more]

追撃

         湿度九十パーセント。  その女子高生は持っていた黒い傘を振り回したが、若い男は振り下ろされたそれを掴んで強引に奪い取り投げ捨てた。もう一人の男が女子高生の襟口を掴んで力任せに引っ張る。女子高生はいとも簡単に床に倒れた。黒い髪が薄汚いクリーム色の床に広がる。  ひとけのないセンタープ… [more]

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