category:小説ドッキング
夏のしにがみ
牧師が二人に語りかける。
参列者の中には、懐かしいあの面々の姿もある。
「黙示録にはあります。火の混じったガラスのような海のそばに、野獣とその像とその数字に勝ち得た者たちが立っています。わたしたちは、野獣を崇拝することなく、その竪琴を弾く者でありたいと思っています」
参列者の女の子が隣の男の子に訊く。
「ねえねえ、『火の混じったガラスのような海』って何?」
「静かにしろよ」
「大丈夫よ」
「優等生って大人になったらこうだから嫌なんだよ」
「ねえ何? 火の混じったガラスって」
「死の淵だよ」
「新ノ口?」
「死の淵」
「こわい」
「大丈夫だよ」
「なに?」
「だから大丈夫だって」
「根拠あんの? アホはこれだから嫌なのよ」
「アホはお前の方だよ。まぁ見てろよ、大丈夫だから」