category:小説ドッキング
夏のしにがみ
鳥の色。
求婚の季節になると鮮やかな彩りに身を包む鳥。サバンナの大地を一面ピンク色に染める鳥。険峻な絶海の岸壁に身を寄せる黒い鳥。濃い緑を模して森に潜む鳥。田園の中に立つ真っ白な鳥。様々な色の鳥がいる。鳥たちは背景から浮かび上がり、また時に世界に潜むような色と目をして、ふいに高い声で鳴き、鳴き合う。
一羽の鳶が入り江の上空で大きな弧を描いている。
悠久の紺碧を見下ろして、やがて森に帰って行った。また明日もやってくるに違いない。